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今宵、神楽坂で

第七号(2020年11月)

三蔵法師の旅 ~平成西遊記~ ④

2020年11月11日 21:07 by morrly

 5月25日(土)6:30起床。気温23.7℃、標高900m。本日も晴れ。7:40に出発してすぐにまた山の中を自転車を押して上り始める。通り過ぎる車はトラックばかりで、人が行き来する様子はない。

 

 

 さて、本日の最終目的地は華亭という街であるが、そこからは甘粛省に入る。交通の不便なところが境界線になるのは自然なのだろう。ここから華亭までの道路は大部分が未舗装道路であった。

 

 ここで一つ問題が出てくる。外国人旅行許可証の問題だ。西安で「問題ない」と言われていたのは陝西省内だけで、甘粛省についての確認は省都の蘭州まで行かねばならない。しかしかといってわざわざ隴県からバスで蘭州に行き確認してここまで戻ってくる、ということもやってられないので我々はそのまま行くことにした。一応日本での情報では、華亭から蘭州間の我々が通過する町には外国人未開放地区はなかった。それに加え今まで通過してきた「周至」「眉県」「隴県」は未開放地区ということだったが、これがあっさり問題なかったことも判断材料の一つとした。

 

 9時には標高960mと高度ながら気温が25℃にもあがり、昼(標高1250m)には29.7℃と、着実に気温も上がっていく。多少の下りはあるもののただひたすら押して上る。途中に村が出て来るが、四方を山に囲まれており隣の村に行くのに必ず車で?山を越える。自転車を押して上っているのは自分たちくらいであった。

 

 

 やがて15時になると、標高は1325mだというのに、気温は37.4℃にまで上がっていた。暑い……。昨日までの疲労に加え、頭痛も抱えているなか、この暑さのなか自転車をひたすら押すのは地獄のようだ。――と、げんなりしながら登っていたところ、珍しく峠に店が出現した。天からの救いか。昨日も町に着いて買った、みかんの瓶詰を購入して勢いよく飲み干す。生き返った。後半もなんとか頑張れそうだ。

 

 

 その2時間後、暑さは36.4℃と続いていたものの、ランドマークである平涼と華亭の分岐点(標高1530m)に出る。緑が生い茂る山の中だった。そして分岐点を通過してからは、しばらく平坦路の下りが続き、久しぶりに爽快な走りであった。しかし、時間も時間でありこのまま華亭に着くのかと思っていたが、街は一向に出現せずまた山の上りが出てきた。この時間から山を越えねばならないのか……私は暑さと上りの疲労を抱えた体のまま呆然と立ち尽くした。だが途中で諦める選択肢などない。なぜならこれは探検なのだから。いつまでも止まっていても仕方ないのでさっさと自転車を押し進めるのであった。

 

 今更ながらに思うことだが、なぜ西安で詳細な地図を探さなかったのか。我々が携行していたのは、神保町で見つけた中国全国版のロードマップのみでおおよその道筋と、町と町との間の距離が記載してあるだけのものだった。そんな地図に詳細な道筋など載っているはずもなく、我々はその簡素なロードマップを見ながら、西安から蘭州までは最短距離で設定していたので、結果的にひたすら山の中を突っ切っていくルートになっていたのである。

 

 疲労と頭痛を抱えたまま坂を上り続けて19時半を少し過ぎた頃、標高1520m地点に到着した。日は落ち、辺りは暗くなりはじめている。まだ街は一向に見えず(先は長いなあ……)と思いつつ先に進む。そして日が完全に落ち真っ暗になったころ峠に着いた。眼下に街の灯りが広がっていた。ようやく今日のゴールが見えたのである。ドラマティックな場面かもしれないが、正直疲労と頭痛のせいで、正直に言えば感動よりも安堵感が大きかった。ドライかもしれないが、それが探検活動のリアルなのだ。灯りが見えてからは、何も考えず今まで押し上げてきた位置エネルギーを一気に開放して下り始めた。

 

 そして22時前、華亭の街(標高1420m)に到着した。このときの気温は25.6℃にまで下がっていた。行動距離わずか68.2kmながら行動時間はなんと14時間! 単純計算で時速約5kmとかなりしんどいものだった。ほとんど自転車を押している記憶しか残っていない。(つづく)

 

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