『VINO NAKADA』
■カウンター、堀こたつ、中庭に小さな池と石灯篭、ここは隠れ家のイタリアン
「VINO NAKADAは靴を脱いでくつろげる気取らないイタリアンのお店。友人の家に遊びに来たような感覚と、美味しいお酒と食事に心まで癒される。家族と、恋人と、仲間と、みんながまた来たいと思っていただけるお店を目指しています。」(お店のHPより)
神楽坂五丁目、風情のある石畳の小径から石の階段を下りたところ。古民家の引き戸を開けると、え?ここがイタリアンのお店なの?と目を疑う。靴を脱いで「お邪魔しますね」という感じ。「昭和20年代には50~60畳の広さの料亭だったんですよ。かつて神楽坂は花街だったでしょう。ここも何軒もあった料亭の一つだったんですね。今はこうしてイタリアンだけど建物の躯体にかつての面影が残っています。」と店主の中田久義さんは説明してくれた。中庭には立派な石灯籠がドンと鎮座していて、有意に石(溶岩)を配置し、真ん中には小さな池、その背面には石垣が積まれている。建物の歴史を< VINO NAKADA>は継承している。狭い空間に日本の風景(宇宙)を作り、ここに寛ぐ客人の心に正風を送り込む気遣いもまた継承しているのである。
■“イタリア人”でアスリートの中田さん
中田さんはイタリア人のように明るい。(静かなイタリア人もいるだろうけど) 実は中田さんは20代前半の4年間をイタリア第二の都市ミラノの高級日本料理店で働いた経験をもつ。そのときは大手食品メーカーの外食事業部門の従業員として赴任するかたちだった。店舗ではホール、接客の仕事に従事した。若き頃のミラノでの体験が今の中田さんを形成していることは疑いようがない。とりわけお客様に接する姿勢には一本筋が通っている。そして中田さんは運動系の人である。中学、高校とバレーボールをやっていた。バレーボールは今でも地元の小学校(亀戸だそうです)のパパさんチームで続けている。「リベロです。どんな球でもレシーブしてみせますよ。」接客の達人はリベロの達人でもあった。お客様もボールもしっかり受け止める。そんな中田さん、イタリアでの異文化体験を振り返ると吃驚することが少なくなかったと語る。その中でも強烈なのは、とにかくレディファーストの国で、女性を大切にする国民性だった。「サービスは当然女性から、ドアを全部開けて先に通したり、コートを掛けたり、椅子を引いたり、さっと開いた傘を差しだしたり。もちろん食事のときも。ワインを注ぐのも、料理を取り分けるのも徹底してレディファーストでしたね。」そのときの見聞がその後の中田さんの思想と行動を決定づけたようだ。
■イタリアと日本はよく似ている
中田さんは説明する。この二つの国はいかによく似ているかということを。「イタリアも日本も共に南北に長く海に囲まれた国。双方とも四季がはっきりしています。それは豊かな食材を約束してくれます。北に行くとミルク、バター、チーズなどの乳製品、そこから南へ下ると滋味豊かな土地から収穫できる新鮮で種類も豊富な野菜類。さらに南にいけば果物の宝庫です。周囲は海に囲まれているから当然新鮮な魚介類も多く獲れる。ね、日本と同じでしょ。イタリアの食材は日本料理で扱いやすい。一方で日本の食材を使ってイタリア料理のアレンジもしやすいんです。新鮮な食材が揃えば、イタリアも日本もそれぞれの地域で彩り豊かな郷土料理が生まれます。」お話を聞いていて、なるほどイタリア半島と日本列島はとても似ているなと、今更ながら気が付いた。熱海に生まれ、高校時代は伊東に通った中田さんが仕事でミラノに赴任したのは運命だったのかもしれない。ミラノからは150kmほど南下すれば、港湾都市ジェノヴァのある地中海だ。さらにその先はキャンティワインを生産するトスカーナ地方。そこは燦々と陽光が満ちる場所であるに違いない。そこは中田さんの故郷の熱海や伊東と同じように。
<VINO NAKADA>
162-0825 新宿区神楽坂5-43
Tel 6457-5747
月 ~ 土 ランチタイム12:00 ~15:00 ディナー17:00 ~ 27:00 ※
日 12:00 ~ 24:00
月 定休日
charge 1,000円
喫煙不可 WIFI環境あり
※深夜営業についてはお問合せください、とのこと。
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