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今宵、神楽坂で

第二十号(2021年06月)

ラムのロック、チェイサーはコーラを瓶のままで

2021年06月10日 12:47 by kneisan2011

 

「キューバリブレを!」
「ちょっと待ってくれ、、、(カクテルブックを急いでめくる) ふざけるな! ただのラムコークじゃないかビッチ!!」

 

これは映画『カクテル』のワン・シーン。大盛況のカウンターごしにウェイトレスを怒鳴り散らすのは若き日のトム・クルーズ演じる新人バーテンダートミー・フラナガンだ。ラムコーク。ジンコークとか、ウォッカコークとかはあまり聞かないが(あるにはあるが)、ラムコークはかなりメジャーなカクテルと言える。別名 “キューバリブレ”。厳密にはキューバ産のラム酒を使うのが“キューバリブレ”のルールだがまあ似たようなものだ。このためだけにバーにはコーラがあると言っても過言ではないだろう。恐らく大多数のバーが瓶入りのコカ・コーラを使用していると思う。当店もそうだ。あの甘いコーラにラムが入るとなんともコクのある大人の味わいを醸し出す。少し濃い目がいい。

 


 このカクテルのオーダーが入ると、作っている様子を見ていた他のお客様から「へぇ、瓶のコーラ置いてあるんだ」なんて言われたりもする。「ございますよ。瓶のコーラは美味しいですよね」なんて返すと話が弾む。


 お客様曰く
「缶よりうまい」
「デザイン変わらないね?あ、文字が違うのか」
「ペプシもあるの?」
「昔、瓶コーラだけの自販機あったよね?」
等々。

 

コーラは完璧なカクテルだと思う。レシピは不明だが様々な類似品が世界中に存在する。最近ではクラフトコーラなんてのも。私はよく瓶のままコーラをお客様にお出しする事がある。笑ってしまうのだが皆さんあっという間に飲み干す。どんなカクテルや上等なシャンパンよりも美味しそうに早く(笑)。 写真なんて撮る人はいない。それが何かを物語っている。バーのカウンターで飲む瓶のままのコーラ。瓶のまま飲むというちょっと無作法な事をしていいのだろうかという気持ちと、誰もが共有できる味わい。高価なウイスキーや、マニアックなカクテルの名前や味は知らなくてもコーラは誰もがその味わいを知っている。コーラに勝てるカクテルや酒は存在しないなぁ、なんて思う。少し大袈裟か。

 


 バーには様々なソフト・ドリンクが存在する。フレッシュ・フルーツのジュース、生姜の利いたジンジャー・エール、複雑な味わいのトニック・ウォーターに、クラマト(貝のエキス等をブレンドしたトマト・ジュース)や、変わり種ではミルク・セーキやカルピス・ソーダだってある。バーならではのソフト・ドリンクは数々があるが、断然私はコーラを薦める事が多い。あの甘さと香りはアルコールに疲れた口に何ともよく合う。葉巻やタバコの合間にも素晴らしい清涼感をもたらす。ラムやウイスキーを飲み干した後、ほんの大さじ一杯のコーラを入れてグラスをゆすぐ。何とも言えない複雑な大人の香りがたちこもる。余計なハーブやスパイスの香りが無いからかもしれない。

 


 こんな事言っていても早くお酒が出せるバーを再開したいな、と思いますけどね。その際は『ラムのロック、チェイサーはコーラを瓶のままで』っていうのを試して欲しい。皆さん騙されたと思って是非やってみて欲しい。きっと驚くはず。バーで飲むとコーラってうまいんだな、って。

 

 

Bar Tarrow’s 中村 太郎

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