『bar Morrlü』
■飲み物について
カウンター越しの棚に並んだ酒瓶を見ると、ほとんどが初めて見るお酒だった。世界各地に探検活動に行った店主の坂口さんの探検仲間が持って来るのだそうだ。例えば、キルギス共和国のブランデー「クルグスタン」。三蔵法師が天竺に行く途中で立ち寄ったとされる同国最大の湖、イシク湖の水質調査に出かけた際、調達してきたものである。イシク湖は標高1600mに位置し、旧ソ連時代は魚雷の試験場として使われていた為、外国人が近寄ることが出来なかった幻の湖である。その他にもアイスランドの氷河洞窟に挑んだ際に調達してきた「レイカ」(ウォッカ)や、「ヒンブリミ」(ジン)等、アイスランドのお酒。スリランカ密林遺跡探査の際調達してきた「V.S.O.A」(アラック=椰子蒸留酒)等のスリランカのお酒。近くに世界を感じられてわくわくしてしまう。「お酒、お茶、食べ物を通してその土地の文化や風土を知ってもらいたい。」と店主。その一助として店の本棚には、海外のガイドブック、地図、探検記などがずらっと用意されている。
飲み物だけではなく、『神楽坂名物 ラグマン』(麺料理)も販売している。坂口さんが今話題のウイグル新疆自治区へ行ったときに出会った中央アジア料理の一つだそうだ。中国・西安(麺)とイタリア・ローマ(パスタ)のいいとこどりをした上に、エスニックなスパイスが異国を思わせる。他にも、ラグマンのご飯版『ガンファン』やピラフの語源になったともいわれる『プロフ』も提供する。因みにチーズを加えた『チーズラグマン』や十数種類のスパイスを加えた『カレーラグマン』はこの店のオリジナルだ。「この先も新たな味を開拓していく。」と坂口さんは意欲を燃やしている。
確かにいろいろなお酒はあるが、この店にはミクロネシア連邦のシャカオ(カヴァ)や韓国のトンスル、南米のアワヤスカなどは置いていない。「捕まりたくありませんから。」坂口さんは笑顔で答えた。
■ダイバーシティな報告会
ここでは様々な報告会などのイベントが不定期に開かれている。書き初め大会、個展、寄席、探検報告会、サメ紹介イベント、JAICA職員の外国赴任記などジャンルは様々だ。元々は探検の魅力を広く伝える為に探検に関する報告会をやり始めたのだが、今は話したい人が話す、聞きたい人が聞ければいい、という形になっている。「『探検は知的好奇心の肉体的表現である。』と言ったスコット南極探検隊隊員のチェリー・ガラードには怒られるかもしれませんが、知らないことを知ることは楽しい。なんでも探検です。」と坂口さんは今の時代に合わせて考えているようだ。
■モーリー学院
人は宝である。という信念のもと、バーとは別に昨年「モーリー学院」を設立。教育事業にも力を注いでいる。‶気合″‶根性″‶余裕″が三本柱。中国語学科、ロープワーク学科、エイジング塗装学科、ロバ車学科など様々。中国語学科は3人の先生がおり、初級から上級まで幅広く対応。特にロバ車学科は、日本で5本の指に入るであろうロバ車の使い手が先生なので日本トップクラスと言っていいだろう。修了者には免許が授与される。
気付くといつの間にか外は真っ暗になっていた。窓にはヤモリが姿を見せる。「ヤモーリーと言うんです。」と坂口さん。本人の経歴や矜持などまだまだ聞くことはあったのだが、開店時間が近づいてきてしまったのでインタビューを切り上げ退散することにした。
地蔵坂を下ると、そこにはいつもの賑やかな神楽坂があった。
<bar Morrlü>
162-0828 新宿区袋町2 鈴木ビル1-C
Tel 090-5772-1185
月 ~ 日 18:00 ~ 02:00
(現在2021年4月時点は18:00 ~ 20:00)
不定休
charge 500円
喫煙可 WIFI環境あり
ペット OK
個室 あり ※要事前連絡
ハーネスシート あり
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