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第十五号(2021年3月)

クラフトビール入門

2021年03月25日 15:08 by morrly

 今やコンビニエンスストアやスーパーの棚でも見かける機会が増えたクラフトビール。興味はあるけれどどんな味なのか?どれを選べばいいのかわからない、そもそもクラフトビールとはなにか?今回はこれを読んでいる皆様がクラフトビールを身近に感じて頂けるような紹介をしていきたい。

 

まずはビールそのものの始まり

 

社会の教科書にも載っている紀元前8000~4000年頃に栄えたメソポタミアのシュメール文明でビールに近しいものが飲まれるようになったと言われている。作り方も麦を粉に挽いてパンを焼き上げた後に水に浸し自然の酵母で発酵させるという原始的なもの。その後中世ヨーロッパでは修道院で上質なビールが作られ、1516年にはドイツにてビールの材料に麦芽、ホップ、酵母、水以外は認めないという法律(ビール純粋令)も出来るほどビールの知名度は上がった。

 

現在、世界各国には多種多様なビールが溢れている。世界一のビール消費量を誇るチェコで一番有名なピルスナー・ウルケル。ギネス記録でも知られるアイルランドの黒ビール、ギネス。ドイツのミュンヘンで作られる小麦ビールのヴァイツェンはバナナやクローブの香りが楽しめる。ベルギーのホワイトエールはコリアンダーの爽やかな香りがムール貝のビール蒸しにピッタリ。アメリカの低アルコールでグビグビ飲めるバドワイザーは生産会社として世界30%のシェアを持つ最大手だ。

 

 

クラフトビールとは?

 

果たしてクラフトビールとこれらのビールは何が違うのか? クラフトビールの成り立ちは1970年代のアメリカに始まる。1920年に定められた禁酒法によりアメリカ国内のビール文化は衰退の一途を辿っていたが、1978年に当時のジミー・カーター大統領がホームブリューイング(自家醸造)の合法化法案にサインしたことによりクラフトビールブームが盛り上がりをみせるようになった。人々がホームブリューイングをする理由は様々である。市販品を買うより安くつくからという人もいるらしい。しかし、多くのホームブルワーの動機は「自分の飲みたい味わいのビールを造りたい」圧倒的にこれだ。合法化後、街にはホームブリューイングマートというビール造りのための店が出来、必要な麦芽やホップ、酵母を手軽に購入できるようになった。このように個人のホームブルワーが”手作り”でビールを醸造することがクラフトビールの発祥だと考えられる。元来移民の国アメリカではそれぞれが欧州各地発祥のスタイルのビールも楽しんでいたが、それらをベースにアレンジも加えたりするようになった。

 

 

IPA人気

 

現在クラフトビールシーンで最も人気のあるスタイル、IPAがまさにそうだ。イギリスでホップをたくさん入れることにより保存性を高めたビールとして生まれたIPA。2000年頃の西海岸のカリフォルニア州ではこのIPAのホップアロマや苦味をさらに強調した味わいに進化させウェストコーストIPAと呼ばれるようになり、これがクラフトビールブームを一躍広めることになった。日本で入手しやすいウェストコーストIPAだとヤッホーブルーイングの〈インドの青鬼〉という商品がある。コンビニエンスストアでも見かけるので是非試して頂きたい。鮮烈な苦味とグレープフルーツの様な柑橘フレーバーが楽しめる。

 

ウェストコーストIPAのみならず、IPAは進化を続け近年盛り上がりを見せているのがヘイジーIPAというスタイル。ヘイジーとは英語で「濁った」という意味合いで特殊な酵母を使用しホップ投入のタイミングを変えることにより濁った色合いと苦味がほぼないフルーティーな味わいに仕上げている。こちらはビール専門店でないと入手しづらいが三重県にある伊勢角屋の〈ねこにひきヘイジーダブルIPA〉が代表例としてオススメ。材料に通常の麦芽に加えオーツ麦を使用しており、トロッとした口当たりとトロピカルフレーバーは麦の酒とは思えない飲みやすさだ。

 

副材料としてフルーツを多用するのもクラフトビールの特徴の一つである。日本国内でもフルーツエールの人気は絶大で、長野県の南信州ビールが作るアップルホップはその名の通りリンゴを使ったビール。ふじ、王林、シナノスイート、紅玉など季節によって品種を変えて醸造しているのでリンゴの特色が味わえる。カルトな人気を誇るのは大阪は箕面ビールの〈桃ヴァイツェン〉だ。もぎたての桃を手で剥ぎビールに投入するとまるで桃を丸かじりしているよう。桃の収穫シーズンにしか飲めないので見かけたら買い逃しのないよう。

 

 

ビールの美味しい飲み方

 

これらクラフトビールを購入したらすぐにでも飲みたくなるが、その気持ちをぐっとこらえて一日冷蔵庫で寝かせてあげると移動で暴れた炭酸が落ち着き、ビールをより美味しく楽しめる。そして大事なのがグラス。どんな形でもお気に入りのもので構わないが、重要なのは洗い方。グラス専用のスポンジの用意と拭き上げずに自然乾燥の二点だ。食事用の皿を洗うスポンジだとグラスに油がついてしまう。布巾での拭き上げも同様にホコリや糸くずが残る可能性があるので要注意。

 

 

銘柄選びのアドバイスは難しい!

 

どんな銘柄を選んだらいいかに関しては非常にアドバイスに悩むところだ。クラフトビールのいいところは自由に作られている点なので味わいも千差万別。手っ取り早いのは専門店のスタッフに自分の好みを伝えてお勧めしてもらうことだろう。またラベルのデザインがオシャレなものも多いのでジャケ買いもいいかもしれない。好きな人はラベルを剥がしてコレクションしたり、ボトルに花を生けて花瓶のように使う方もいる。クラフトビールとは自由に手作りされたビール。多種多様なスタイルがあり、最初から好みに合うビールを見つけるのは難しいかもしれない。しかし、膨大な種類があるからこそ自分の好みにピッタリなビールと出会うと喜びもひとしおだ。好きな場所で好きな相手と好きなビールを飲む、そんな自由な時間をクラフトビールと共に過ごして頂ければなによりだ。

 

 Hop – Scotch Craft Beer & Whiskey  小池祐介

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