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今宵、神楽坂で

第九号(2020年12月)

バー巡り・其の五(前篇)

2020年12月08日 19:48 by kneisan2011

『神楽坂 BASIC』(前篇)

 

 

■イタリアン・ダイニングと種類豊富なお酒。朝まで楽しめるカジュアル・バー

「お客様はカップルの方が多いですね。三人、四人で見える方も少なくないかな。」と店主の瀬口祐貴子さんはいう。地上の小じんまりした入口からは想像できないけどB1の店内は思いのほか広い。40席ある。「貸し切りで50人くらいまでオーケーです。」とのこと。夜も更けるころ、お客さんで席が埋まってゆく。コンクリート打ち放なしの天井にはパイプ類がむき出しに走っている。ここは船底か潜水艇の内部かという感覚。あるお客さんからはシンガポールのBARみたいと言われたらしい。ペンダント型のライトの下の長いカウンターの表面はエメラルド・グリーンのタイル。そこに背面の酒ボトルが並んだ棚のバックライトや壁に掛かる「CAMPARI」のネオンの赤、そして「ハイネケン」を冷やしている冷蔵ケースからの緑色の光が反射している。ひやりとした石のカウンターに肘をつきながらボトルのハイネケンを喉に流しこむのがカッコいい。それが絵になる店。

 

 

<神楽坂 BASIC>はカジュアル・ダイニング・バーである。神楽坂の街には様々なタイプの飲食店がひしめく。コースの充実したフレンチやイタリアン、風情ある和料理の店、静謐な正統バーもあれば、本格中国料理、町中華、大衆居酒屋、串揚げ専門店、高級鮨店に回転すし、焼き鳥に焼肉店、蕎麦店、そこにミシュランの星を持つ店まで、途方もないほどの飲食店群。そんなカオスにあって<神楽坂BASIC>が際立つのは、明け方近く(なんと29時!)までやっていて、豊富な種類のウイスキーやカクテルが飲めて、カジュアルイタリアンも食べることができる稀有な店だからだ。料理メニューが豊富で一人暮らしでご飯をつくるのが面倒なときに有り難い店。このスタイルは神楽坂に意外と少ない。 

 

 

メニューを覗いてみよう。まず、ドリンク。洋酒のメニューは豊富だ。ウイスキーはもとよりジン、ラム、テキーラ、ウォッカといったスピリッツの銘柄も充実している。シングル・モルト・ウィスキーは20種以上、バーボンは15種類以上。ブランデー、コニャック、カルバドス、ワイン、さらにカクテルの数はメニューから溢れそうだ。200近くはあるのではないだろうか。お次はフード。チーズや生ハム、自家製ピクルス、それにソーセージの盛り合わせなどは間違いのない一皿という感じ。キャラメル・ポップコーンやビーフ・ジャーキー、ドライ・フルーツなどの手軽なスナック類があるのは嬉しい。ソースたこ焼きなんていうのもある。そしてチーズ・オムレツ、バター・チキンといったメインがあり、本領発揮はピッツァとスパゲティである。ピッツァはアンチョビとガーリックが、スパゲティはアラビアータが謎によくでるとのこと。時計の針がてっぺん(深夜0時)に近くなると常連さんたちが集まってくる。ピッツァやスパゲティをマイナス3.5度のハイネケンで流し込む胃のタフな人たちが。

 

 

■くまモンのミラクル人生!  (~1~)

店主の瀬口さんがここに至るまでには相当ミラクルな人生があった。22歳のとき熊本から人生初上京。(それまで彼女は東京という土地に行ったことがなかった。) その2年前の2011年はくまモン(※1)がゆるキャラグランプリを獲った年だった。(瀬口祐貴子さんのニックネームはくまモンである) 熊本を飛び出したという感じだったという。「地元の会社に内定をもらっていたんですけどね。何のビジョンもなく東京に出てきちゃいました。」と笑う。ここには恐ろしくて書けないけれど地元を飛び出したのは止むに止まれない理由があったらしい。大学進学で一緒に上京した弟と立川のアパートに同居。東京に行く直前にネットサイトで急きょ就職を決めたのは飯田橋の洋菓子店で、立川から1時間半かけて通った。その洋菓子店はとある大手チェーンのフランチャイズの会社だった。そこで1年半ほど働いた。来る日も来る日も「●●ちゃん焼き」をひたすら焼く。多いと一日数千個焼く。何時間もやっていると姿勢が固まり、目を瞑っていても手が自動的に作業を続けていた。人生このままこれを焼き続けているだけでいいのだろうか、と思ってしまった。そして彼女に転機がやってくる。 (次回へ続く)

 

 

※1)熊本県PRマスコットキャラクター「くまモン」は熊本の人を意味する「くまもともん」という意味である。身長約200cm、体重約100kg。やんちゃで好奇心旺盛。誕生日は九州新幹線鹿児島ルート開業日の2004年3月12日。黒いのは熊本城のイメージ。ゆるキャラに似つかわしくない俊敏でキレのある動き。得意技はくまモン体操、サプライズを見つけて広めること。

 

 

<神楽坂 BASIC>

162-0825 新宿区神楽坂5-32 近江屋ビルB1F 

Tel 03-3267-3050

営業時間  18:00 ~ 29:00 (現在2020年12月時点は27時L.O)

定休日  日・祝日

charge    500円 

喫煙可  WIFI環境あり

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