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三蔵法師の旅 ~平成西遊記~ ③

2020年10月12日 11:56 by morrly

 天気は快晴で気温は26.7℃。昨日までの曇り空と打って変わって爽快な自転車日和だ。

 いつも通り7:30に出発し、街を快適に走行する。街を抜け暫くすると山に入り、上り坂が始まった。急坂は終わることなく続き、まだ12時を回ったくらいなのに既に2時間以上登り続けている。快晴になったおかげで気温も順調に上昇(29.4℃)。序盤の麦畑の道なら気持ちよく走れたかもしれないが、暑く苦しい行程が続いた。額から滴り落ちる汗が目に入る。昨日から感じている頭痛が体力と集中力を徐々に奪っていく……。

 山に入ると道はアスファルトではなく、土になった。土ぼこりが汗でべたついた肌にまとわりつき、不快感がさらに増す。途中、どこかで飲み物でも買って休憩をしたいが、山の中に店は当然皆無。段々畑がどこまでも続くばかりであった。人の姿でさえも、養蜂をやっている人がときたまいる程度で、ほとんど見られなかった。つらいが、何も頼るものがない。これが探検の苦しさか……。頭痛は相変わらず続いているし、終わりの見えないこの地獄の上り坂にただ耐えるほかなかった。

 

 

 私は安定門から10㎞毎に記録として前方に見える道の写真を撮影していた。丁度、また10㎞走ったので写真を撮ろうと、頭痛と暑さと疲労で朦朧としながらカメラを荷物から出そうとしたが、ない! なんと私は、途中で休憩した茂みにカメラを置き忘れていたのだ。

 やってしまった……。頭痛や気温のつらさでここまで集中力を奪われていたのだ。取りに戻ることを考えるが、カメラを忘れた休憩地点からかなり登ってきてしまっているし、また自転車を押して登るのもつらい……。一瞬、戻ろうか逡巡したものの、結局歩いて取りに戻ることにした。自転車は坂の上のほうに置いたままだ。

 結構な距離を下っただろうか。歩きで取りに戻ったはいいものの、自転車をあのまま置いておくのも不安だ。そして何より、カメラを置いた休憩地点もよくわからない。山の中には店などもないため、ランドマークになるものが一切ないのだ。景色は段々畑ばかりで、道の脇にある茂みも似たような場所ばかり。完全に休憩地点を見失ってしまった。

 結局、私はそうそうにカメラを諦めてしまった。この地獄の上り坂の途中で、頭痛に耐えながらカメラを探し回る体力など残っていなかったのだ。今までの写真は取り戻せないが、サブカメラは持っているからまあいいやと。

 

 

 結局1200mの標高最高地点を越え16:03に龍県の街(標高880m)にへとへとになりながら到着した。宝鶏から81㎞走り、到着したときには気温は32.0℃であった。もう体中の水分が奪われている。

 山の中の小さな町だ。ひと気のない山道でひたすら頑張ったあとでは、この小さな町でもうれしく感じる。店があるのだ。早速、商店でつぶつぶみかんのジュース(1.2元)を飲む。暑さで乾ききった喉に冷たくて甘い果汁が沁みわたる。最高だ。体が乾いたスポンジみたいにジュースの水分と栄養を瞬時に吸収していっているような気さえする。このときの爽快感は一生忘れられないだろう。

 そしてその商店で今回の活動で重要な役割を果たしたみかんの瓶詰(3.6元)に出会う。日本でいうみかんの缶詰が瓶になっているだけなのだが、我々には以後最高の御馳走となった。

 

 

 19:40にはやっとのこと宿を見つけ(龍県招待所 28元)、近くの食堂へ行った。一日中坂道で頑張ったせいでエネルギーを消費しつくし、空腹の極致だ。昨日までは農村部でもまだ食堂がちらほら存在し、どこかしらのタイミングで飯を食うことが出来たため、携行食をあまり持っていなかったのが本日の失敗であった。

 待ちに待ったご飯だったが、とにかく腹が減り過ぎていたので料理を注文し過ぎてしまった。

 

 みかんジュースと大量の晩御飯で補給十分! 明日からまた元気に走るぞ! となればよかったのだが……。

 頭痛は治るどころか日増しに酷くなっていく。一方、道は病院などあろうはずがない山の中へと続いていくのであった――。(つづく)

 

 

bar Morrlü 坂口篤史

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