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今宵、神楽坂で

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出逢い・ひととの縁、ジンとの縁

2020年09月23日 17:36 by kneisan2011

私は幼少時代(小、中学校)、勉強が出来ず運動音痴、何をやっても中途半端な子供だった。中華職人の父親は大の本好き。自宅は四方八方小説と料理の専門誌だらけ。そうしたある日、本棚の一角に思わず目をとめた。コミックBAR レモンハート』との出逢いだった。中学一年生の時に自分の部屋を与えてもらうと、F1とレモンハートに夢中になった。お年玉でCDプレイヤーを購入し、度々友人を部屋に招いては好きな音楽をかけ談笑したり、ズブロッカの空き瓶をくるくる回してトム・クルーズの真似をして遊んだ。今やっている事となんら変わりはない(笑)。

両親が留守の日、友達に初めてカクテルを作った。ゴードンとシュエップスの「ジントニック」。

友達は険しい顔をして

「シャンプーの味がする、しかもメリット!」

「・・・・」

自分もそう思った。

この友達は24年後、〈BarSylvius〉の内装デザインを手掛ける事に。上原貴吉君、エチュードデザイン代表をしている。

高校合格祝いに、父親が行きつけのBAR〈バーバリーコースト〉に連れて行ってくれた。この店との出逢いでバーテンダーを志す。上野マスターは今でも心の師匠だ。初めて飲んだカクテルはジンベースの“青い珊瑚礁”。強過ぎて完飲出来ず…。のちに上野マスターよりある物を譲り受ける。ある物とは「Domestic Gin 1919」だ。『レモンハート』第9巻に登場したこのジン。掲載したお酒のすべてには解説やエピソードが添えられているが、この「Domestic Gin 1919」だけはGINの生い立ちが綴られているだけで作者が作った架空の酒かと思っていた。上野マスターに「お前が持っていろ」と差し出された時は、驚きの余り言葉が出なかった。西暦1919年、和暦でいえば大正8年。未だ未開封。今年101年物になる。恐らく色々な人の手に渡って割られずに令和の今に至る(?)。1919年はアメリカの禁酒法が施行される一年前だ。当時を想像しながら飲むとタイムスリップさせてくれる事だろう。<Bar Sylvius〉にて鎮座する。

品川プリンスホテルに入った19の頃、BAR巡りに没頭した。仕事終わりに時々先輩が蒲田のBARに連れて行ってくれた。西口の〈BAR Zi〉。 マスターの傍らでテキパキとサポートをしているバーテンダーがいた。当時は会釈程度で会話は殆んどした事がなかった。そしてそのバーテンダーは、10年後、銀座に勤めていた私をヘッドハンティングする事になる。〈夢幻〉グループのオーナー中崎さん、その人だ。中崎さんとはその10年の間に、この広い東京で三、四度偶然出くわす事があった(決まってお互いの変革期に)。お互いに縁を感じていたのかもしれない。初見から数えると、もう四半世紀になる。いまでも一緒に飲んでくれる兄貴の様な存在だ。

バーテンダーになって20年を迎えようとする頃、口下手でアドリブに弱く、お酒にめっぽう詳しくない自分がバーテンダーとして向いているかどうか悩んだ事がある(今も時々)。周囲のバーテンダーはどんどん独立し、焦りもあった。そこにあるお客様が一言をくれた。「同じ事を長く続けられている事が才能なんだよ。  Byソコピー」

足踏みをしていた自分に背中を押してくれた様な気がした。そこから独立に向けて現実的に考える。

物件探しで神楽坂の不動産屋さん数件を回ったが、なかなか情報は得られず。別口で探した2件を内見し、エントリーしたが縁がなかった。落胆している中、〈夢幻〉の郵便受けに個人商店の不動産屋さんのチラシが入っていた。ダメ元で連絡すると直ぐに今の物件を持ってきてくれた。即決。縁を感じた瞬間だった。

〈夢幻〉の初代店長は女性のKさん。彼女の実姉は神楽坂でも有名な呑み子。〈夢幻〉にも頻繁に来店してくれた。姉さんは私の事を弟の様に可愛がってくれて、一番の応援者だった。2015年9月大雨の夜。〈夢幻〉で呑んで酔った姉さんを玄関まで見送った。翌日、妹さんから電話。訃報の連絡だった。〈Bar Sylvius〉開店1ヵ月前のことである。神楽坂の呑み仲間全員が悲しみに包まれた。店の開店を待たずして天国に行ってしまったが、今は〈Sylvius〉の守り神、シーサーになってくれてると信じている。

 

人生は出逢いと別れの連続。一期一会の精神で「縁」を大切にし、身体が続く限り「バーテンダー道」を真っ当して行きたい。 

 

〈Bar Sylvius〉 田淵 無

 

 

『がんばれ無さん!』

「1600km離れた南の島からひとり上京して、東京で店持つって同郷の先輩の俺としても凄いと思うよ。あんな動物臭い部屋に住んでたお前がなぁ~。コロナに負けないでガンバれよー。健康な間は呑みに応援しにくるさーねー」
夢幻にはいったばかりの頃からご贔屓にして頂いている沖縄県糸満市出身の○城さんです。
酔うとよくこの話しをします。
※私が独身の頃、ウサギを飼っていた部屋に引っ越しの手伝いをしに来てもらった事があります。

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